これまでは、SNS投稿やWebサイトといったデジタルデザインを中心に学んできましたね。Canvaのスキルは、オンラインだけでなく、現実世界で手に取れる印刷物の制作にも大いに役立ちます。
今日は、名刺やチラシなどの印刷物のデザインに挑戦してみましょう!Webデザインとは異なる、印刷物ならではの基本ルールや注意点を知ることで、トラブルなく、あなたのデザインを最高の品質で形にすることができますよ。

今回は、あなたの名刺を一緒に作成しながら、印刷物デザインのコツを実践的に学んでいきましょう!
印刷物の種類とCanvaでの選び方
Canvaでは、名刺、チラシ、ポスター、パンフレット、Tシャツ、マグカップなど、非常に多岐にわたる印刷物のデザインを作成できます。まずは、作りたい印刷物の種類を選びましょう。
印刷物に適したデザインの種類を選ぶ
Canvaのホーム画面で印刷
をクリック。


作りたいデザインの種類を選択します。


印刷用テンプレートの選び方
名刺の種類を選択したら、Canvaが提供する豊富なテンプレートの中から、あなたのブランドイメージに合うものを選んでいきましょう。
テンプレートは、デザインの土台となるだけでなく、印刷時の注意点(塗り足しなど)も考慮されているため、初心者の方には特におすすめです。


印刷物デザインの基本ルールと注意点
WebサイトやSNS投稿のデザインと異なり、印刷物には特有のルールがあります。これを知らないと、せっかくのデザインが文字切れしたり、色がくすんでしまったりする可能性があります。
まずは、印刷物デザインの基本となるルールと注意点を確認していきましょう!
カラーモード:RGBとCMYKの違い
RGB
デジタルデバイス(PC、スマホ画面など)で色を表現する方式です。光の三原色(赤・緑・青)を混ぜて色を表現するため、鮮やかで明るい色が多いのが特徴です。Canvaの編集画面で見る色は、基本的にはRGBカラーです。
CMYK
印刷機で色を表現する方式です。インクの四原色(シアン・マゼンタ・イエロー・キープレート/黒)を混ぜて色を表現するため、RGBに比べて表現できる色の範囲が狭く、全体的に落ち着いた色になります。
注意点
RGBで作成したデザインをCMYKで印刷すると、画面で見た色よりもくすんで見えることがあります。CanvaでPDF(印刷)形式でダウンロードする際にCMYKカラープロファイルを選択できますが、完璧に色を一致させるのは難しいため、あらかじめCMYKに変換した際に色味は問題ないかを意識してデザインしましょう。
※CMYKカラープロファイルを選択するには有料プランが必要です
解像度
解像度とは、画像のきめ細かさを示す数値で、「dpi」(dots per inch)という単位で表されます。数値が高いほど、画像は鮮明です。
- WebサイトやSNS
72dpi~96dpi程度で十分です。 - 印刷物
ポスターやチラシなどの一般的な印刷物には、300dpi~350dpi程度の高い解像度が必要です。名刺のような小さな印刷物でも、文字やロゴをきれいに印刷するためには高解像度が不可欠です。
注意点
Canvaにアップロードする写真や素材は、できるだけ高解像度のものを使用しましょう。解像度が低い画像を拡大して使うと、印刷時にジャギー(ギザギザ)やぼやけが発生してしまいます。Canvaの素材は基本的に高品質ですが、ご自身でアップロードする写真には特に注意してください。
トリムマーク(トンボ)と塗り足し
印刷物を裁断する際に、どうしても数ミリのズレが生じることがあります。これをカバーするためのルールがトンボと塗り足しです。
- トリムマーク(トンボ)
印刷物を正確に裁断するための目印となる十字の線です。CanvaでPDF印刷データをダウンロードする際に設定できます。 - 塗り足し(裁ち落とし)
デザインの端まで色や画像を配置する際、仕上がりサイズよりも外側(通常3mm程度)までデザインを広げておくことです。裁断時にズレが生じても、用紙の端まで色があるように見せることができます。
注意点
トリムマークと塗り足しの設定は、印刷会社への入稿に必要になります(各印刷会社の規定などを確認してください)。CanvaでPDF印刷データをダウンロードする際にトリムマークと塗り足しのオプションにチェックを入れることで、自動で設定されます。
セーフティゾーン(文字切れ対策)
- セーフティゾーン
仕上がりサイズの端から内側に数ミリ(通常3~5mm)入った領域のことです。
注意点
名刺の文字やロゴ、写真の重要な部分など、裁断されては困る要素は、このセーフティゾーンの内側に配置しましょう。テンプレートは基本的にセーフティゾーンを考慮して作られているはずですが、デザインを大幅にカスタマイズする際には意識してください。
実際に名刺を作成してみよう!
それでは、先ほど選んだテンプレートを元に、あなたのオリジナル名刺を作成しながら、印刷物デザインの基本ルールを実践してみましょう!
今回は表面のみ作成します。余力のある方は、裏面も作ってみてくださいね。
名刺の基本情報の入力
表面には、氏名、会社名(または屋号)、役職(Webデザイナー/代表など)、連絡先(電話、メール、WebサイトURL)を入力します。
仮の情報で、テンプレートのテキスト情報とロゴを入れ替えてみました。


名刺デザインのカスタマイズと印刷ルールの確認
入力した情報を元に、名刺のデザインをカスタマイズし、印刷の注意点を意識しながら調整してみましょう。
塗り足し領域と見切れる範囲の表示設定
デザイン編集画面で、画面上部のメニューバーにあるファイル
をクリックし、設定
から以下の項目にチェックを入れましょう。


- 塗り足し領域を表示する
これにチェックを入れると、キャンバスの周囲に塗り足しが表示されます。この点線まで背景色や画像を広げることで、裁断時に白いフチが出ることを防ぎます。 - 見切れる範囲を表示する
これにチェックを入れると、仕上がりサイズの内側に重要な要素の配置を避けるべき危険エリアが表示されます(素材などを近くに持っていくと表示されます)。文字やロゴなどの重要な情報は、この危険エリアの内側に配置するようにしましょう。


背景色、フォント、レイアウトなどの調整
名刺全体の色味や文字の雰囲気を調整しましょう。今回はロゴに合わせて、テキストフォントの変更、上部のカラーの変更(赤→緑)を行いました。
レイアウトはテンプレートのままとします。


印刷用データの書き出し
デザインが完成したら、いよいよ印刷用のデータとして書き出しです。
作成した名刺デザインを、印刷会社への入稿に適した形式でダウンロードしましょう。ここでは、塗り足しとトンボを含んだデータを作成し、それを受け入れ可能な印刷会社での利用を前提とします。
PDF印刷(高解像度)でのダウンロード
画面右上の共有
ボタンをクリックし、ダウンロード
を選択します。
ファイルの種類でPDF(印刷)
を選択します。これが最も印刷に適した高解像度データです。


続いて、トリムマークと塗り足し
オプションにチェックを入れます。これは印刷会社にデータを渡す際のとても大切な設定です。このオプションを有効にすることで、仕上がりサイズの周囲に3mmの塗り足し領域と、裁断の目印となるトリムマークが自動的に付加されたPDFデータが生成されます。
PDFのフラット化
とは、デザイン内の複数のレイヤー(画像、テキスト、図形など)が1つの画像として統合されます。これにより、印刷会社でのデータ処理がスムーズになり、文字化けや表示崩れなどのトラブルを防ぐことができます。これもチェックしておくと良いです。


CMYKカラープロファイルを選択
有料プランのオプションですが、カラープロファイルの項目でCMYKを選択すると、より印刷時の色味のズレを抑えることができます。


上記の設定が終わり、ダウンロード
ボタンをクリックすると、印刷用PDFデータがパソコンに保存されます。


印刷サービスへの発注のヒント
Canvaからの発注
ダウンロードせずに、画面上部のCanvaで印刷
ボタンから直接Canvaの印刷サービスを利用することも可能です。デザインと印刷がCanva内で完結するので便利です。
外部印刷会社への入稿
ダウンロードしたPDFデータは、ラクスルやグラフィックなどの外部のオンライン印刷会社に直接入稿することができます。 各印刷会社のデータ入稿ガイドを確認し、指示に従って入稿しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今日は、Canvaを使って名刺を作成することに挑戦し、印刷物ならではのルールや注意点を学びましたね!
カラーモード、解像度、トリムマーク(トンボ)と塗り足し、といった専門用語も、Canvaの操作と結びつけて理解を深められたかと思います。
Canvaは、デジタルデザインから印刷物作成まで、あなたのアイデアを形にする強力なツールです。今日学んだコツを活かして、ぜひあなたもオリジナルの名刺やチラシなどを作成し、ビジネスや活動に役立ててみてくださいね。
お疲れ様でした!



次回は最終回で、CanvaのAI機能などさらなる活用術についてお伝えします。お楽しみに!